入院患者様、デイケアメンバーにとって食事は楽しみのひとつです。
委託給食が増えている中、直営給食にこだわり当院の味を大切にしています。
コロッケやなすのはさみ揚げなどは特に喜んでいただいています。
また、季節に合わせた行事食も作っています。運動会ではいなり寿司、クリスマス料理にお正月、それにお彼岸のおはぎはあんこから手作りのものを出しております。
栄養課では、食べることで健康の基礎が作られるということを大切にしています。
当たり前ですが、食べなければお腹が空きます。お菓子だけでもお腹は膨れるし、野菜を食べずにお肉だけでもお腹は満たされます。
しかし、身体の健康は大丈夫でしょうか?
普段の生活では、どのようなものを食べるか自分で選ぶことができます。身体は食べたものを使って基礎が作られています。給食を食べていただき、バランスのよい食事とはどのようなものか考えてもらえたら幸いです。
「食事とは決しておろそかに出来ないもので、気にしていれば健康を損なう確率はさがる」このことを念頭において、おいしいと喜んでいただける食事作りを目指しています。
昨今多くの医療機関が食事業務を外部委託している中、当院においては開院時より自院での手作り調理にこだわって食事を提供しております。今日、安価な既製品も多い中、食事は治療の一環と考えて、限られた食費の範囲内でどれだけ栄養化が高く美味しい食事を提供していくか、いつも栄養士・調理師で切磋琢磨しております。
実際、精神疾患を持つ患者さんは、栄養に関して関心のない方も多く、食事の偏り(糖質中心)や栄養不足(低タンパク)がみられます。
統合失調症において約2割の方にカルボニルストレス(終末糖化産物の蓄積)の関与があるとの報告があります。また、以前はうつ病治療に関しても、心身の休養・薬物療法・心理療法が中心であり、食事療法・運動療法についてはあまり考えられていませんでしたが、最近ではうつ病の発症には食生活や運動が深く関係していることが広く知られています。
発達障害についても同様で、治療としての食事療法の報告があります。
AGEsとは終末糖化産物と呼ばれるもので、アマドリ化合物より合成され非可逆的な物質と言われています。また、一旦我々の体に入ると、排泄が難しく蓄積されるため、それが老化の一つの原因であることがわかってきています。
では、糖化しない食事とは?と考えたときに、当院では、平山一政先生(別府出身)の提唱しておられる50℃洗い・低温スチーム料理を採用することにしました。
様々な研究結果より、体内のAGEsの3分の1は食事から摂取していることが分かっています。しかし、スチーム調理を採用することで、食材の美味しさを最大限に引き出しながらAGEsの値を下げることが出来るのです。
AGEs研究の大家である山岸昌ー先生も、毎日の食事の3分の1程度でもAGEsに対応した食事にするだけで、蓄積するAGEsを減らすことができるとおっしゃっています。
当院においても全て蒸し料理にしているわけでもありません。
食材にこだわってこられた方も、今後はどのように調理するかも考えられるとさらによいと思います。せっかくの良い食材でも、調理法によってはそれを生かすことが出来ていないかもしれません。
平山一政先生の低温スチーム料理教室は、月1回は、別府鉄輪の富士屋ギャラリーにおいて、行われております。富士屋ギャラリーのホームページはこちらです。
参考文献
糸川 昌成
カルボニルストレス代謝障害と統合失調症
Japanese Journal of Biological Psychiatry 26 (1) :27 – 33, 2015
糸川 昌成
カルボニルストレスという代謝異常と統合失調症
The Japanese Society of General Hospital Psychiatry (JGHP) 254-261 2013
AGEの大家 Sho-ichi Yamagishi