時代は変わりましたが、精神科というとやはり受診しづらい診療科であることは間違いないように思います。しかし、他の病気と同じように早目に治療を開始することがとても大事なことです。
精神科が専門領域とする代表的な疾患を紹介しておきます。
幻覚や妄想がでてくる代表的な疾患です。
「誰もいないのに声が聴こえてくる」「見張られている気がする」「人目が気になる」「嫌がらせをされている気がする」「何か怖いことが起こりそうで不安になる」といった症状が、ほとんどいつも存在して一ヶ月以上続く場合は疑ってみる必要があります。
思春期から青年期に発症することが多いのですが、小児期や老年期での発症もみられます。発症年齢や症状の特徴から破瓜型(解体型)、妄想型、緊張型などにわけられます。統計によって若干の違いがありますが、約120人に1人程度が罹るといわれており、決してまれな病気ではありません(日本で70万人以上)。発病率に男女差はないといわれています。
似たような症状を呈する疾患として妄想性障害や統合失調感情障害、統合失調型人格障害などがあります。
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一生の間には7人から15人に1人が罹ると考えられている疾患です。
軽症の場合はうつ病であることに気づかれずに過ごしていることがあり、身体の不調が症状の中心となることも珍しくないため、内科や婦人科、脳外科を受診する場合も多いようです。
「眠れない」「食欲が無い」「食べ物が味気ない」「疲れやすくなった」「集中力が無くなった」「何をしても楽しめない」「薬を飲んでも効果が感じられない頭痛や胃痛がある」といった症状が続く場合は疑ってみる必要があります。
似たような症状を呈する疾患として躁うつ病や統合失調感情障害、統合失調症、適応障害などがあります。
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不安とははっきりとした対象のない恐怖のことを言います。
不安障害の中には「パニック障害」「強迫性障害」「社交不安障害」などがありますが、複数の症状を持つ方も多く、分類することが困難な場合があります。「理由もなく息苦しくなる」「激しい動悸がする」「戸締りやガスの元栓の確認が気になって生活に支障が出ている」「電車やバスのつり革が不潔に感じて触れない」「人前で話をするのが苦手で仕事に影響が出ている」といった症状がある場合は疑ってみる必要があります。
他にも発汗や頻脈、胸痛、頭痛、下痢といった症状がよくみられます。
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誤解されがちですが、認知症とは単なる物忘れではありません。
認知症の定義は「何らかの脳や身体の病気を原因として記憶や判断力の低下が起こり、普通の日常生活をおくることが困難になった状態」です。
代表的な認知症としてはアルツハイマー型認知症や血管性認知症がありますが、甲状腺機能低下症や水頭症が原因となることもあります。また、うつ病と見分けがつきにくいこともあり、専門医への相談が重要です。
他にもアルコール依存症や過眠症、不眠症などの睡眠障害、てんかんといった疾患の治療も行っています。
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(*)神経発達症は「発達障害」と通称されてきた疾患です。出典元(世界保健機関WHO等)文書や日本語訳の違いであり、両呼称は同義です。
神経発達症は、幼少期から現れる脳機能障害によって脳内の情報処理や制御に偏りが生じ、日常生活に困難をきたした状態のことです。
得意・不得意の差は誰にでもあるものです。しかし神経発達症の方は、得意・不得意に非常に大きな差がみられるという特徴があります。優れた能力や多彩な力がある一方、極端に苦手な能力により、日常生活に困りが起きやすい一面もあります。
神経発達症が明らかとなるタイミングには個人差があります。幼い頃から困りごとが現れる方もいれば、進学や就職、結婚など、ライフイベントをきっかけに、周囲から求められる能力の質が変わることで困りが明らかになる方もいます。
当院では患者様一人ひとりに合わせて、心理スタッフによる丁寧な聞き取り及び心理検査、主治医による診断・治療などを提供しております。
神経発達症は主に次の3つに分類されます。
それぞれは重複することもあり、人によっては複数の特性を併せ持つ場合もあります。
(ADHD:Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)
(LD:Specific Learning Disorder)
「読む」「書く」「計算する」など、特定分野の学習に極端な困難が生じる
(*参考)
2022年1月1日に正式発効した、最新の国際疾病分類第11版(ICD-11)では、○○障害から○○症へと名称の変更が行われました。